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解析概論の傷? [日記]

 線型代数入門に続き、志賀浩二の固有値問題30講を読んでいました。この本は、はしがきに
  ”固有値問題を2次の行列の場合からはじめて、ヒルベルト空間上の作用素のスペクトル分解に至るまでの道を一気に描いてみた”
とあるように、線型代数から関数解析学を固有値問題という点からまとめられた本だ。
 落ちこぼれ学生だった私には、ヒルベルト空間などさっぱり分からなかった。この本で、雰囲気ぐらいは味わえるかなと読み始めた。線型代数入門を読んだ後だったので、前半部分は復習となり、快調に読めた。しかし、後半、積分方程式のお話の後、ヒルベルト空間が出てくるとかなり手こずった。収束問題や、完備性などの解析学用語が出てくると、もういけない。学生時代に結構やったはずだが、どうも自信がない。
 この本自体も、証明は『ルベーグ積分30講』を参照していただきたい、などと逃げているようなところもある。しかしどうせなら、もう少し自分なりに納得したい。
 というわけで、固有値問題30講は一時中断し、簡単な本を軽く読んで復習してみようと思った。さすがに高木解析概論を読む元気はない。そこで簡単そうな田島一郎『解析入門』岩波書店を読み始めた処だ。
 イプシロン-デルタから詳しく書かれていて、とても分かりやすい。学生時代に使いたかった本だ。本当に今の学生は幸せだ。
 なつかしのデデキントの切断、有界な単調数列の収束など懐かしい単語を復習していると、解析概論で出てきた図があった。少し記憶と違うなと思い、解析概論を取り出してきて比較した。実数の連続性に関する4つの定理、1)デデキントの切断、2)上限または下限の存在、3)有界単調数列の収束と4)区間縮小法が同等であると説明する図だ。たしかに解析入門では少し変更されていて、4)から1)を証明するとき、2)、3)から証明できる5)アルキメデスの公理というのを挿入している。4)から1)を証明する途中で5)が必要になるのだ。
 これを見て、あることを思い出した。森毅の何かの本で、授業である有名な本を使っていたら、その本に問題があり、そこを学生に質問されて困った、という話だ。おそらく高木解析概論だろうなと想像していたが、それがどの箇所かは全く分からなかった。この田島解析入門は、解析概論をかみ砕いて解説している様な本である。わざわざ解析概論の図を変更していることから、森毅が困ったところはここではないかと想像している。
 たしかによく考えてみると、4)から1)の証明には5)が必要だ。以前解析概論のその部分を読んだ時は全く考えもしなかったし、この本で指摘されてもそのままスルーしてしまうところであった。
 こんな点からも、自分がいかにいい加減に数学の勉強をしていたか分かってしまう。この田島解析入門、なかなか侮れない本である。


解析入門 (岩波全書 325)

解析入門 (岩波全書 325)

  • 作者: 田島 一郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/01/20
  • メディア: 単行本



固有値問題30講 (数学30講シリーズ)

固有値問題30講 (数学30講シリーズ)

  • 作者: 志賀 浩二
  • 出版社/メーカー: 朝倉書店
  • 発売日: 1991/05/01
  • メディア: 単行本



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