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複素関数論が何故こんなに分かりやすいのか [日記]

 高校がとてもダメなところだったため、勉強といえば独学しか選択がなかった。幸運にもそんな高校から大学に入れた。反動で、大学ではよくわからず沢山授業を受講した。うちの大学は、1年から専門の授業があり、一般教養と専門の授業を並行して受けるようになっていた。一般教養も、1年の専門講義も無い枠に、2年向けの複素関数の講義があった。やる気に満ちた私は、それを選択してしまったのだ。つまり、微分積分学と線形代数をとりながら、複素関数の講義を受けていたのだ。大学のイプシロンデルタに困惑しながらコーシーリーマンを理解できるわけが無い。来年もう一度受講すればいいと思っていた。まるで分かっていないが、うちのようないわゆる駅弁大学では、それでも試験が通ってしまったのだ。2年になって、大学のゆるい生活に慣れてしまうと、単位をもらった複素関数をもう一度とろうとは思わなくなってしまった。そんなわけで、複素関数がよく分からないまま今日まで来てしまった。何回かやり直そうとも思ったが、挫折してきた。
 
 たまたまtkyonという方の 英語で学ぶ物理学 Google サイト版
 という素晴しいページを発見した。とてもためになり、参考にさせてもらっている。ただ、英語の講義は私のレベルには難しく、何回も見直す時間もない。そんな中慶應義塾大学の授業を見てみた。大学院生みたいな若いお兄さんが講義していてビックリしたが、調べてみると准教授らしく、さらにビックリ。自分が年取ってしまったんだなと、今更ながらに気づかされた。youtubeの講義ビデオの他に、web上で練習問題と解答まで載せてくれている。なんともありがたい時代になったものだ。
 公開されている11回分の講義を見たが、とても分かりやすかった。複素関数論に対する苦手意識が解消された。しかし、何故こんなに分かりやすいのだろうと考えてみた。30年以上前に受けた講義と比較してみると、

1)なぜこんなことをやるか、説明しながら進む。長沼伸一郎『物理数学の直感的方法』の恩恵かもしれないが、これからやろうとしていることの目的を話しながら講義してくれている。これがありがたい。自分の目的地を教えてくれるだけでこんなに違うものなんだな。

2)板書の量が少ない。昔受けた講義は、ただひたすら板書していた気がする。黒板が2段になっていて、教師が書きながら上下に動かしていた。たまに教師が動かし忘れ、今書いたばかりのところを消して書き出したりして、よく悲鳴が上がっていた。慶応のビデオでは、黒板(後半は年度が代わり、ホワイトボードになっていたが)は横長で固定式だった。定かではないが、昔の黒板より面積が狭い気がした。

3)進み方がゆっくり? 曲がりなりにも、一度勉強したことなので、ゆっくりに感じるのは当たり前かもしれない。しかし昔はもっと詰め込まれていたような気がする。等角写像、解析接続、リーマン面とかやってた気がする。

4)講義の中で演習を行う。ビデオではカットされているが、講義の途中で簡単な演習の時間がある。私も同じように演習をやってみたが、自分で手を動かすというのが理解にはとても役に立つ。

5)疲れたり分からないとき中断できる。講義を自分のペースに変えられるのはとても便利である。止めて振り返るだけでなく、板書中は早送りしたりもした。

 教科書では行間を読まなければ行けないようなことも、講義では伝えてくれる。こんな講義を自由に受けられる。本当に素晴らしいことだ。これを機に複素関数の教科書を読むことにする。
 
 この講義を行っている山本直樹(まんが家と同姓同名)先生は、ご自分で『複素関数論の基礎』という教科書を書いている。ビデオ中の教科書もこの本のことだと思っていた。しかし、11回の最後の処で映っている本は、どうも神保道夫『複素関数入門』のようだ。


複素関数論の基礎

複素関数論の基礎

  • 作者: 山本 直樹
  • 出版社/メーカー: 裳華房
  • 発売日: 2015/11/28
  • メディア: 単行本



複素関数入門 (現代数学への入門)

複素関数入門 (現代数学への入門)

  • 作者: 神保 道夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2003/12/12
  • メディア: 単行本



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